ボラン農場の牛たち

アルモリカの小さな村からアルモリカンArmoricaine牛たちのお話をお届けします。

気候が変わってしまったら

ここで雨が降らなかったら草は枯れてしまう、というギリギリのところで降りました。

大した雨ではなかったけれど、地面が少し緑がかったような。(気のせいかも。)でも、これから1週間は晴れの予報。まだまだ油断できません。

何度も言いますが、ボラン農場は花崗岩でできた丘の上にあって、土は申し訳程度しかありません。あちらこちら岩肌が出ていて、杭を打つのも難しいほど。すなわち、定期的に雨が降ってくれないと、草は枯れてしまいます。

草と言っても、牧草にするために蒔いた草ではなく、勝手に生える野草、と言うか雑草ばかり。そういう丈夫なものしか生きられない環境です。

こんなボラン農場に26年もいると、極端な気候も各種経験しました。

まず、大雪。2週間ほど閉じ込められました。台風並みの嵐も毎年秋に来ました。最高風速が時速180キロを越すこともありました。(秒速にする計算方法がわかりません。)谷間の木がどんどん倒れます。1970年代にはもっと強力な嵐があったとか。夏の干ばつで牧草が全て枯れてしまったことも、数回ありました。気温が39,8°Cまで上がったことも。(牛たちといっしょに木陰で寝てた。)

その都度、牛がこれだけしかいなくて良かった、と思いました。頭数はその時代によって3頭だったり、20頭だったり、まちまちだけど、それ以上いたら全員のめんどうを見きれなかったでしょう。

これからは、ますます極端な自然現象が起こるとか。それなら、牛は少数精鋭でやるしかない、と思うんです。

今、T村の南地区(ボラン農場のすぐ南)では、農地争奪戦の真っ最中。ちょうど、どの農家も世代交代に時期。子には良い条件で継承させてあげたい、という親子心からでしょう。土地さえたくさん持っていれば安泰ですから。

ヨーロッパ共通農業政策の助成金制度が現在の形になってから、土地の取り合いが激しくなりました。簡単に言うと、それぞれの土地にそれまでの履歴で価値が付いていて、毎年申請をすると、たとえ何もしなくとも、その金額がもらえる仕組みです。だから、別にこれ以上土地が必要なわけじゃないけど、借りれるものなら借りておこう、と言う人も現れました。土地の借り賃より、そこの助成金の方がはるかに高いので。

でもね、そんなに土地を広げて、動物の頭数を増やしても、その世話をする人数を増やさないで、どうするの。これから、今までに経験したことのない厳しい気候が待ってるかも知れないのに。

若い後継者の話は、また次の機会にでも。

Miyoko Ollie

みよこちゃん、あんたは生き残れるわ。(電気牧柵の下から食べる子。)おりいちゃん、ママ大丈夫だから、心配しないでね。
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アニマルウェルフェアって言うけれど

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アニマルウェルフェア(日本語は?)って言葉をよく聞きます。
一般市民や団体が、畜産業界でごく普通にやっている動物虐待はもう止めよう、と言う提案をしても、業界側が反対して、なかなか法律に反映しません。(グリフォサートの禁止しかり。)

だんぼくんの1カ月前に、リュリュくんが出発した時のことです。
パリにある会社に買い取ってもらったもので、いつもとは違う屠畜場のお世話になりました。

以前、いなりくんを買ってもらった会社であり、屠畜場も場所は違うけれど前と同じ会社で、あの時と同じように大切に扱ってもらえるだろう、と信頼しきっていました。

だいたい、出発の数日前に屠畜場からお迎え時間連絡の電話があった時、『運転手に銀行口座証明書を渡してくださいね。』と言われて、はぁー? 担当の人は、リュリュくんは屠畜場(を経営している会社)に買ってもらうのではないことを知りませんでした。で、いや〜な予感が。

当日、お迎えのトラックを見ただけで、後悔しました。

トラックはオンボロで、汚れたまま。車体を下げる装置は壊れていて(いつから?)、リュリュくんは、私の背とほとんど同じ位の高さまでよじ登らないといけませんでした。中にすでに小さなホルスタイン牝牛がいて、きっと乗せるのに苦労したんだと思います。トラックは、予定の時間を40分ほど遅れて来ましたから。

運転手さんは、牛を前進させるために電流で脅す装置(日本語で何て呼ぶんでしょうか)、バットのような棒、ロープの三種の神器を出してきました。

リュリュくんは、他のメンバーのように、うちのトレーラーに乗るのは慣れています。牛によっては(例えばマルキーズ)いったん足を踏ん張って乗るのを拒否し、これから行くところを充分観察してからでないと乗らないのもいますが、時間さえ与えれば、決心して乗ってくれるものです。

でも、トラックはとてつもなく高く、どんなに慣れた子でも、ずんずん乗り込むわけがありません。

私たちがリュリュくんのおしりを強く叩いたりしないので、イライラし始めた運転手さんは、
『まだ、あと、雄牛二頭乗せなあかんのやから、早よしてよ。』

あの、あんたが遅れて来たんですけど、とは言いませんでしたが。。。

運転手さんに叱られて(叩かれて)、いやいや汚いトラックに乗り込んだリュリュくん。

あの小さなホルスといっしょに、一番前の仕切りに閉じ込められたので、あとから乗ってくる雄牛たちにいじめられる心配はないけれど、でも、でも、これから何時間走るのやら。で、最終目的地に着いても、時間的に生産ラインは止まっているだろうから、明日の朝まで待たされる?

私たちとしたら、それはイヤなので、いつもは、待ち時間のないタイミングで、自分たちで屠畜場まで連れて行くようにしています。

リュリュくんの扱われ方は、私たちにしたら大NGです。さっそく、会社にクレームしました。(あと2頭ではなくて、3頭だった。)

なにも、うちの牛たちだけ特別扱いしてもらいたい、というものではありません。これから死んでいくものに、あんな扱いはない、と思うんです

業界にすれば、牛も豚も家禽も、みんな大量生産の原料。動物も感性のある生き物、という認識を持ってもらうまで、まだまだ時間がかかりそうです。

でも、もっと認識を変えないといけないのは、生産者だと思います。

特に肉牛の場合、どこも完全放牧です。畜主のすることは、柵の管理と飲み水を持っていくことぐらい。牝牛の種付けは雄牛がしてくれるし、お産もたいてい助産なし。(子牛には耳標を付けてやらないと。)牛が人間と関わり合う機会はほとんどありません。たまにあったとしても、怖いことや、痛いことばかり。

いえ、完全放牧がいけない、と言っているわけではなくて、牛が好きでもなく、本当は興味のない人に飼って欲しくないんです。

人間を知らずに大きくなった牛が出発する時、無理やりトラックに乗せられたら、恐ろしくて、恐ろしくて、暴れるでしょう。牛があんまり暴れるので、屠畜場の係の人も、武装して立ち向かうしかありません。

牛は野生の動物のように、自然の中で一生を終えるわけではありません。どうしても人間と関わらないといけないのだから、たとえ最後は裏切ることになっても、人間好きな牛に育てたいんです。それも、アニマルウェルフェアでは?

牛もそれぞれ性格が違って、中にはいくらやさしく接しても、信頼してもらえず、逃げてばかりの子もいます。でも、顔見知りになるだけでも、恐ろしさは軽減されるはずです。

ほんとに人間好きの子は、たとえ脱走しても、ちゃんと戻って来てくれますから。

人工授精の危機?

農業でも、一般の企業でも、大きくならないと生き残れない、と言うのが常識になっています。

ボラン農場当初から来てもらっている人工授精コープも、数年前に大きなグループに統合され、去年はそれがまたもっと大きなグループの一員となり、料金設定に変更がありました。全国で統一しよう、という名目だけど、そういうのは、必ず値上げになります。

2016年は、授精師さんに一回来てもらうと39ユーロ。付かなかった場合は、3回まで無料、それ以降は半額でした。

2017年は、上記とほぼ同等のサービスが55ユーロ。ただし、2回目以降は出張費が有償で、8ユーロちょっと。

そんな一回では付かないことを想定した(ホルス向けの)高いサービスなんかいらない、と私たちは、第1回目34ユーロ、以降はお種ストロー1本10ユーロ+出張費8ユーロを支払う、という契約をしました。いえ、したつもりでした。

契約が2017年の2月。9月になってようやくその新しい会社から7カ月分の請求書が。

各牛1回目が55ユーロ。のべ10頭分だからほぼその10倍。

契約とは違うので支払い拒否です。いろいろもめたけれど、訂正してもらえて、やっと2017年1年分支払ったのは先週のこと。

アルモリカンは発情の発見が難しく、人工授精ではタネが付かないことがよくあるので、以前から雌牛数頭でも雄牛を飼う人がいました。それが、上記のように人工授精が法外に高くなると、そうだ、雄牛にお任せしよう!、って誰でも思うでしょう。私たちもそう思ったもん。(思っただけ。)

せっかく若い雄牛を人工授精センターに入れたのに、その冷凍精液はほとんど使われなくて、ほとんどの生産者が自前の雄牛で繁殖したら、アルモリカンの将来はどうなんでしょう。

実際、多いんです。雄牛を探してるとか、うちの雄牛と交換しないかとか。本当に良い牛だからそうするのなら、悪いとは言わないけど。。。

確かに、大規模にならないと生きて行けない時代だから、アルモリカンも肉牛らしく、繁殖は雄牛にお任せ、か。

今日は、私の大好きなルーシーの人工授精がありました。げんきの娘で、ママにそっくりなちょっとこわい顔をしてるけれど、性格はママよりもっとかわいい。

Lucy Hiver 18

授精師さんに何度も来てもらうと高くつくから、一回でOKになりますように、というのはうそです。

また、ジュリーのエコー検査もついでにしてもらいました。2回目の人工授精はOK!

冬の間、牛舎の席が足らなくて賢い牛になる(繋がれる)教育を受けられなかった一年生3頭のお稽古もできたし、今日はほんとに良い日だった。

古いピアノ



古い牛:本文とは関係なし

一週間ほど前から(依然として工事中の)家に、古いピアノが来ました。

これから家の中の壁を塗るので、じゃまになるものは全てまとめて、使わないものは捨てたばかりなのに。
すごく場所を取ります。グランドピアノだから。

私が県で一番大きい街にバスで行くと、どうしても前を通る楽器屋さんがあって、もう何年も前から、カワイの白いグランドピアノが置いてありました。『ああ、ピアノもいいなぁ。』といつも見ていました。

良くある話ですが、私も、小さい時ピアノを習いたかったけれど、ピアノなんて買えないからダメ、と言われた一人です。そうして、ピアノを始める時期を逃してしまい、大きくなってからやっとハモンドオルガンを習い始めた、というわけです。

ボラン農場に引っ越す前、私は中古で買ったハモンドオルガンを持ってました。それを親戚の家に預けてあったのですが、その家に雷が落ちて、電化製品全てダメに。私のハモンドオルガンも焦げて、廃棄するしかありませんでした。

だから、新しい家ができたらまた中古のハモンドでも、と思っていたのですが、今は骨董品のハモンドオルガンしかないようで、お値段も私には手が出ないほど高いし、メンテナンスなんてどうするのよ、とかあって、あまり実現できそうにありませんでした。

じゃあ、この際、ピアノにしよう、と決めていました。

そうしているうちに、家はなかなか完成せず、白いグランドピアノも誰かに買われたようです。

そこに、急に降って湧いた古いグランドピアノの話。ワケあり物件なので、ここではお話しできないのですが、引き取る人がいなければ、その場で壊して金属だけ回収する、という運命でした。

クラッシック音楽愛好者のJや、ピアノが欲しい私が、それを放っておく訳がありません。

決める前に、あの楽器屋さんに行って、修理費がどれ位かかるものか訊きに行きました。やっぱり、あまり古いものは修理が高く付くので、それよりももっと新しい中古または安い新品を買った方が良いのでは、と言うことでした。その時に、中古のピアノをいろいろ触らせてもらって、『ねっ、最近のピアノって良い音でしょ。』とお店のマダム。Jは、あの古いピアノをたたいてみたので、マダムの意見に賛成でした。でも、私は・・・。

もっと新しいのを買った方が安く付く、と言われて、しばし迷ったのですが、答えは・・・、

古いピアノ!

1927年にドイツの職人さんたちが一生懸命作ったピアノです。それを買ってもらった子(大人かも知れないけど)が大喜びした顔を想像すると、絶対にこれを壊してはいけない、と思ったのです。

私達が運送費を払って、タダ同然で譲ってもらいました。そして、先週、修理の見積りも兼ねて、調律師さんに来てもらいました。ずっと長い間調律されていないピアノなので、その日は大まかに、月曜日にもう一度調律してもらいます。

そう、調律できるんです! 弾けるんです!

もちろん、ちゃんとした修理をするともっとお金がかかりますが、それは、また少しずつしてもらいます。その修理費に運送費を足しても、お店で見せてもらった一番安いピアノの5分の1。ホッとしました。

あれから、ヒマを見つけてはピアノをたたいてるJおじさん。私が《ド》を教えてやったら『えっ、なんでそんなすぐに《ド》がわかるの?』と驚いたド初心者ですが、なんか勝手に耳で覚えた曲を弾いてます。もしかしたら天才かも。

はじめは、もしかしたらこのピアノ、呪われてるかも、と心配していたJだけど、壊される運命から救ってやった私達を呪ったら、私たちの方こそ呪ってやる、と言うことにしました。

牛飼いの適性



みなさん、何かの講座か講演会に出席していて『今日は先生の話よう解るわ。私、やっぱりアタマ良かったんや。』と思ったことはありませんか。

そういう時は、実は講師の先生が優秀で、誰にでも解り易く、生徒に関心を持たせる話ができる才能のある人だからです。

私が自分で『牛飼いの才能あるわ。』と思うのも、ボラン農場の牛たちが賢くて、特に私に協力的なおかげかも知れません。

牛たちを牛舎に入れるのに、私が牛たちのいるところまで行って、戻って来る時間だけしかかからないので、牛舎で待機しているJは、たいがい、不意をつかれます。(すぐに来るとは思ってないので。)

先日、やっと、ふぶきの人工授精がありました。

午前中に電話したので、授精師さんが来るのは午後2時以降。お昼ごはんがすんだら、ふぶきを牛舎に入れることにしました。ところが、午前中の仕事が長引いて、ごはんを食べ始めたのが1時半ごろ。Jが食べ終わるのを待っていたら2時には間に合わないので、私ひとりで、とにかく牛たち全員を牛舎裏まで連れて来る、ということにしました。

それから15分くらい経ったでしょうか。Jが牛舎まで様子を見に来た時には、牛舎で、マルキーズ(同伴者)とふぶきがつながれてお食事中。Jおじさん、信じられない!というような顔で見てました。

牛舎裏まで来たのは、マルキーズ、ふぶき、牛舎大好き牛いちまとそれぞれの子供、りりとりらでした。関係者以外はお引取り願って、みんなのところに戻したので、牛舎裏はすでに空。

たまたま、牛舎まで来ていたけど私が見落としていた、らなちゃんをつなぐ以外は、Jがすることは何もありませんでした。

何をさせても中途半端でダメな私だけど、牛飼いの能力だけはある、と自己満足しています。適性のあることをしていると、無理をする必要は全くありません。何をしても楽しくて、夜遅くまでかかろうが、夜中に起こされようが、苦になりません。

フランス(特にブルターニュ地方)の畜産農家が、赤字続きで廃業寸前だとかで、もう何ヵ月も前から、時々道路を占拠したりして政府に訴えてはります。私は、フランスはもとより、世界中の食糧を支える農家が無くなっても良い、とは思いません。でも、もしもその中に、生きた動物を棚卸資産としか考えられない人がいたら、動物を飼う適性がない可能性があるので、他の仕事に転職された方がみんなのためだと思います。

反対に、農家出身でなくても、農業への適性を潜在的に持っている人が大勢現れ、勉強して就農できるようになれば、失業率も下がり、世の中が明るくなるのではないか、と私は思うのですが・・・。

上の写真:朝晩の牛の点呼に手間取る霧の日。

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