このところ またずっーと雨です。昨日は 午前中にわか雨だったのが、午後には霧雨になり、夜は大雨 と最悪のお天気でした。買い物に行くのに この下の平地を通ったのですが、どこも小川が氾濫して 湿地が池になっていました。いつもなら3月の景色です。ただいつもより早いだけなら良いのですが、これ以上降ると洪水が心配です。
そういうことで 牛たちにしても つまらない毎日です。きっと 牛舎にごはんを食べに来る時だけが 楽しみだと思います。
ちびっ子ギャングたちに比べると うんとおとなしく、いい子ばかりの一年生。少し食べるとお腹いっぱいになって みんないっしょにお休みです。顔が見えないアスプロ君に続いて、順番にブルータス君、アーニカ、ベルナデット、みよ(いちばん向うはマルキーズ)です。

昨日は みんなが食べに来た時 ちょっとしたもめ事がありました。アスプロ君が どうしても一番端の自分の席に行かなかったそうです。アスプロ君は 他の1年生より体が大きいので、みんなより先につながないといけません。それが なぜか どうしても真ん中の席から動こうとしなかったそうで、Jは ロープを出してきました。何か雰囲気がおかしい と私が牛舎をのぞきに行ったのは その時でした。
一年生が一頭 ロープで引っぱれたせいで おびえて動けなくなっていました。Jは ふと その子の耳標を見て ひとり言のように『ええっ、4047番って。。。』。そうです、4047番はアーニカです。だから、アーニカは 自分の席である真ん中を離れなかったのです。Jが人違いして、一人で勝手に怒っていたのです。『もう、顔見たらわかるやん。』と私が言うと、『大きいのが来たから てっきりアスプロやと思った。アーニカ 夜のうちに大きなったんちゃう。』と とぼけたことを。かわいそうに、なにがなんだかわからず 恐い思いをしたアーニカ。いまさら なでなでしても もう遅い って。
私が写真を撮っていると みよが おなかを見せてくれました。きれいな模様でしょう。

さて、私は 来週水曜日まで 家を留守にします。久しぶりに仕事です。うちのかわいい牛たちの顔が見られなくなるのは さびしいです。戻ったら みんな変わりがないかご報告します。
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このところ けっこう電話があるので、ふと気がつきました。りんりんでも 役に立つことが ひとつだけあります。電話が鳴ると 独特の遠吠えをするのです。犬の吠え方もいろいろあって、だれか来たのか、猫が通ったのか だいたい区別がつきますが、この遠吠えは 絶対に電話です。私たちは 家(小屋)から遠いところにいると、もちろん電話の音は聞こえません.でも、りんりんの遠吠えだけは 聞こえます。そこから大ダッシュして、間に合う時も 間に合わない時もありますが、少なくとも だれかが電話してくれたことだけは わかります。
ただ困るのは、電話を取って『もし、もし・・・』と答えても、りんりんの遠吠えは止まらないのです。だから、電話をしてくれた人には 犬の声しか聞こえず 犬が電話を取ったのだと思います。

それで、私が りんりんに『おだまり!』と言うと、電話の向うの人が叱られたと思って またびっくりです。いっそのこと りんりんが電話を取ってくれたら 誤解もないのに。
もうひとつおかしいのは 電話の着信音を替えても、同じなのです。メロディーが違うのに、ちゃんと電話だとわかります。ただ、一度 電話の調子が悪かったので、予備の電話を使ったことがあるのですが、さすがに それが電話だとはわからなかったようです。でも、3回目位になると 遠吠えが始まりました。
それだけの芸しかできない犬ですが、歩く姿だけでもおもしろくて、けっこう笑えます。こんな犬が家の番をしていても、ちっとも恐くないので いざと言う時 本当に役に立つのか不安です。このあたりでも 最近は 泥棒に入られた話をよく聞きます。うちも農家だから、いろんなものが置いてあります。なんでもかんでも 鍵のかかる所にしまうわけには行きません。だから、泥棒よけに もっと恐い顔をした犬が欲しいのですが、りんりんが 他の犬とうまくいくわけがありません。
りんりんは 長い毛でいろんな物を拾ってきます。あまりにきたなかったので ブラシをかけようとしたら、自分の部屋に逃げ込みました。もう いい年をして子供みたいです。
どこの家庭にも にんじんが嫌いな子 っていると思います。うちには 人間の子はいませんが にんじんが嫌いな子はいます。ポポットがそうです。

前にいた ロバのフォーチュンや馬のおかずは 進まなくなったら にんじんで釣ったものです。だから、ポポットの調教のために、小さくすぎて お料理に使うのがめんどうなにんじんを取っておいたのに。しょうがないので、Jは 細かく切ったビートを使っています。
まず、始めは《お手》のレッスンです。ポポットが小さかった時は ちゃんと前脚も、後ろ脚も上げさせていたのですが、いつの間にかしなくなって、蹄の手入れが満足にできません。だから、今回は 一からやり直しです。ちゃんと《お手》をしたら、ごほうびにビートがもらえます。
次に 首輪を付けてタイヤ引きです。タイヤだと パニックになっても けがをする心配はありません。トラクターのタイヤですから かなり重いのですが この通りずんずん引いて行きます。

特に大事なのは 土手ギリギリのところまで進んで、そこからUターンして止まることです。止まったところで 後ろに引いているお道具の位置を確認します。ストップも大事ですが その前に 右に回るか、左に回るか、はっきり指示しなければなりません。その時、手綱を引くのではなくて、声だけで《右》か《左》か わからせるのがベストです。いつもぼーっとしていたおかずは 右も左もよくわからなかったのですが、ポポットはよく理解しているようです。
これで、ポポットが慣れたら いよいよ 雨のせいでほったらかしになっていた 牧草地のやり直し作業です。実は 私の期待を裏切って、今日も雨なのですが(雨など平気で調教してます。)今度晴れたら、一気に始めないと 遅くなってしまいます。
本当は 私、ポポットの背中に乗ってみたいんです。脚が長くて、うんと背の高いポポットに乗ってお散歩に行くと、よそのやせっぽちの乗馬用の馬たちは 驚いて逃げ出すと思います。早く農作業が終わって、遊びに行けるといいな。
今日はまた まるで春が来たようなお天気です。午後から少し雲が出てきましたが、ポカポカ感は変わりません。今日は新月。これでお天気が変わって、晴天が続いてくれればいいのですが。天気予報によると ずっと雨だそうです。でも、私は お月様を信じたいと思います。
さて、昨日は 牝牛の(雄牛のわけはありませんが)発情を記録する話をしました。今日は 『じゃあ、どうやって発情したのがわかるの』という疑問にお答えしたいと思います。(たぶん、疑問に思ってられる方がいらっしゃると思います。)
まだ若い 初めて種付けする前の牝牛の場合は とても簡単です。発情期になると 大声で叫んでくれます。まるで警報ランプにブザーのようなものです。これが最低16ヵ月まで続くと思うと うんざりですが、あまり待たせると叫ばなくなることもあるので、叫んでもらう方が はっきりして良いのです。

人なつこい牛の場合も 比較的わかりやすいです。発情すると やたらにJの後を追うのがいます。なにか 勘違いしているようです。

これも良くあるのですが、土手に隠れて見えるはずのない牛が見える場合です。その時 顔が見える牛をマークしただけではダメです。その牛は どの牛の上に乗っかっているのか 確認しなければなりません。乗っかられて『あんた、何すんねん。』と怒る牛は 発情ではないか または発情期でも受精には早すぎか、遅すぎです。乗っかられても、動かない牛がいると 人工授精センターに通報です。

と いうことで、昨日の夜 バランチーヌが アーニカやマルキーズに乗られても平気な顔をしていたので、今朝 種付師さんに来てもらいました。今日は この地域担当チームのリーダー、フィリップさんでした。とても腕の良い種付師さんで、たいてい一回でOKです。

去年のことですが、電話通報した次の日の朝 雪が積ったことがありました。車が通れる状態ではなかったので 私たちは完全にあきらめていました。そしたら、お昼前に フィリップさんの車が 中庭に入って来るではありませんか。フィリップさんの車は 四輪駆動ではない ごく普通の車です。坂道で滑って大変だったと思うのですが、そんなことも気にせず 仕事だから と来てくれました。そんな 気の良い種付師さんです。
わざわざ、ごていねいに《2007年カレンダー》と書いた 自家製のカレンダーです。

一番左の列に月曜、火曜、水曜 と上から順番に入れてあります。土曜と日曜(および祭日)は 赤で囲みました。それぞれの枠が日にちで 月はその上に Janvier 一月、 Fevrier 二月 とか書いてあります。これは 何に使うカレンダーかお解りになった方は いらっしゃいますでしょうか。牛飼いの方だったら、もしかして こういったものを お使いになってるかも知れません。牝牛の発情を記録するためのカレンダーです。発情を発見する度に記録して、人工授精のタイミングを見るのに使います。ついでに 子牛の誕生も記入してあります。

牛の発情の周期は だいたい20日なので、21日=3週間で次の列に移ります。そうすると。発情をした牝牛の名前が ほぼ横一列に並んでいきます。うちの場合、18日とか 間隔が短い牛が多いのですが、それでもこれを見ると だいたい次回がいつになるか 予想できます。今は ほとんどの牝牛がお産したばかりなので、1才前後の牝牛(みよ=ビオ、ベルナデット、アーニカ)の名前ばかり目に付きますが、今から付けておくと 16ヵ月からの種付け時期に役に立ちます。
よーく見ていただくと ひとつ異常があります。今日は もう16日なのに、バランチーヌが発情しないのです。今まで同時だったアーニカは もうとっくに発情にしたのに、バランチーヌはさっぱりです。おとといあたりから しっかり観察しているのですが。
人工授精は 午前中に頼むと その日の午後に来てもらえます。正午から夜中の12時の間だと 次の日の午前中になります。今朝も 何回もバランチーヌを見に行きました。二人でそれぞれ見に行くので、見損ないはありません。12時15分前に見に行ったときは バランチーヌとバルダが みんなから離れたところにいて 何となくあやしかったので、決定的な行為が見られたらと 電話を持って待ちかまえていたのですが、結局なんにも起りませんでした。
人工授精の申し込みは 私たちは電話を使います。だれかが出てくれるのではなくて、指示に従って 数字を《ピッ、ピッ》のシステムです。前は留守番電話でした。インターネットを使うことが推奨されているのですが、うちは高速(ADSL)ではない(電信柱のモデムのせい)ので登録していません。
バランチーヌは 先回 日曜日に発情したので、種付けができませんでした。明日は土曜日なので、夕方の5時まで(だと思います。夏は6時まで)に電話すれば 明日中に来てもらえます。何としても、日曜日に持ち込むことだけは やめてもらいたいものです。
このところずーっと雨ばかりだったのが、午後には青空が広がりました。風が少し強いですが、お日様にあたると良い持ちです。りんりんはさっそくひなたぼっこです。(残念ながら、牛たちは牛舎です。)

今日はバレンタインデー。Valentine のフランス語読みはバランチーヌ。うちのバランチーヌのお祝いの日です。でも、本人には何のことかわからないだろうから、べつにプレゼントはありません。それどころか 今日のようなお祝いの日に バランチーヌはひどい目にあってしまいました。
お昼ごはんが終わって、片付けていた時です。牛舎から ヘンな声がしました。いったい、牛なのか馬なのかもわからない 今までに聞いたことのない奇妙な声でした。いつもと違うというのは 良くないことです。私は すぐに牛舎を見に行きました。
牛舎に入るとすぐに ユーチカがバランチーヌを攻撃しているのが見えました。《ムギュー》と叫んでいたのはバランチーヌです。私は ユーチカのおしりをたたいて すぐに止めさせました。ところが バランチーヌは 頭を餌箱の中に突っ込んだ姿勢のままでした。後ろから見たところ どうもチェーンが絡まっているようでした。これは 私の手に負えないと Jを呼びに行きました。
チェーンは 角に引っ掛かって短くなっただけでした。バランチーヌがおとなしく頭を下げてくれたので 簡単に外れました。その時 私は 何気なく左横のたまを見たのですが、なんと たまの首にチェーンがありません。あわてて、バランチーヌとたまの間にいるJに『たま、つな・・・』まで言うと、たまは 後退して逃げ出すではありませんか。とっさに、私が通せんぼして、反対側のマルキーズと壁の間に追い込んだため すぐに逮捕できましたが、もう冷や汗が出ました。
多分 チェーンが外れた(つなぎ忘れたわけではないのは確か)たまが 隣のバランチーヌを攻撃したのでしょう。それから逃れようとしているうちに バランチーヌの角にチェーンが絡まってしまったのだと思います。かわいそうに、床に赤い毛がたくさん落ちていました。たまのあのフォークみたいな角で 引きちぎられたのでしょう。幸い けがはありませんでしたが、バランチーヌが《ムギュー》と叫んだ時 だれも助けにいかなかったら 大変なことになっていた と思うとゾーっとします。
でも、この牛用チェーン、外れるはずはないのですが、Jによると 前にもみよのチェーンが外れて、みよは通路をぶらぶらしていたそうです。
仕掛けはこうです。

チェーンの両端にそれぞれ V型の金具とリングが付いています。リングは3つあって、首に合わせて長さが調節できるようになっています。

こうやって輪を作ると いくら引っぱっても取れないはず なのですが。これが信用できないとなると困ります。今後も まずつなぎ忘れがないように点検をして、それでも外れるようなことがあったら 改善して行かなければなりません。うちのような零細農家でも ポカよけと改善は欠かせないようです。
今朝 5時頃、激しい雨の音で目が覚めました。外で寝ている牛たちが かわいそう。それに 遠くに雷のような音が聞こえます。こんな季節に雷なんて と思っていると、今度は 一瞬空が明るくなり、もっとはっきり落雷の音が聞こえました。こうなると、犬のくせに家の中で寝ているりんりんは 大パニックです。いつものように、腰が抜けて身動きもできず、声も出ず、ひたすら《はあ、はあ》やっています。

りんりんをもらった時、この犬は雷が怖くて、雷が鳴り始める30分前からぶるぶる震え出す と聞いたのですが、そんなの見たことがありません。いつも 私が先に感知して、あれ、りんりん 怖くないんかな と思っているうちに震えが始まります。
でも、ほんとうに雷は恐いです。T村でもこのあたりは雷の名所 と聞いてからは 雷が近づくと牧柵の電気、ラジオ(テレビはありません)、電話(携帯はもちろん、固定も)など 雷を引きつけるものは 切ることにしています。それで、今朝もわざわざ起きて、危ない物は全部切りました。
一度同じようなシチュエーションで 目が覚めたことがあります。まだ半分寝ていて ボーッとしているうちに 閃光とともにものすごい音がしました。あまりのショックで 小屋がまだしっかり立っているのは驚きでした。そのうち 焦げた匂いが漂って来たので、雷が電線にでも落ちて、冷蔵庫か冷凍庫が壊れたのでは と心配しましたが、焦げたのは電話機でした。どうも、電話線を伝って来たようです。それ以来、電話機には注意しています。
でも、フランスには地震はないからいいよねぇ とおっしゃると思います。Jに言わせると『この間 地震があって、死ぬほど恐ろしかった。』です。今から、4~5年ほど前、ここから30キロ位の所を震源地とする地震がありました。その時 よっぽど怖い思いをしたのでしょう。屋根や窓がガタガタ音をたてて、それが10秒以上続いたのだそうです。後で 近所のOさんに聞いたら、ちょうど学校へ行くところだった子供たちが おびえて泣き出したそうです。私もあの時家にいたら(ここから140キロほど離れた会社にいました)、きっと泣いていた とJは言います。でも、たかが震度4程度の地震です。それも震源地で だから、このへんはそれ以下だったはずです。そんなの大したことない と言っても信じてくれません。あれから、日本の○○ホームは耐震設計だよ と言うと すごく関心を示します。
今朝の雷も すぐに行ってしまいました。りんりんも それほど長い間苦しまずにすみました。ただ、外の電柱に付いている電話モデムのヒューズが飛んだらしく、電話が故障です。復旧は遅くて火曜日の夕方だそうです。
夜の間 かなり雨が降りました。またまた いつもの天気です。今朝、10時頃には晴れ間も出たのですが、遠くがきれいに見えていたので お天気が不安定なのは予想できました。午後になったら やっぱり雨が降りました。雨の日は 牛たちが牛舎にいてほっとします。私だって 雨の時は外に出たくないので、牛たちも雨にぬれるのは いやなはずです。こうして今日も 牛たちは いつものように 牛舎でおとなしく乾草を食べています。
その食べ方なんですけど、良く観察してみるとおもしろいです。先回、マルキーズとみよは ゆっくり味わいながら食べる と言いました。その反対が 大食いアーニカです。餌箱に落ちた物は何でも 匂いも充分嗅がず 食べてしまいます。牛舎で餌を食べる時は 他の牛にじゃまされないので 各自 自分のペースで食べられます。でも、中には どうすれば他の牛よりたくさん食べれるか考えるのがいます。それが “たま”です。さすが マルキーズの子だけあって、頭の良さでは群を抜いています。




そう言えば、バランチーヌもマルキーズの子です。ボーッとしているように見えても、食べることにかけては知恵が働くようです。
昨日の朝 パリの畜産研究所のAさんの訪問がありました。Aさんは フランス全国で 頭数が少なくなった地方種の保存活動に当初(1976年)から参加していて、アルモリカン牛に関しても第一人者です。私たちも イッジーとマルキーズを買った1996年以来 ずっとお世話になっています。Aさんは 土曜日にあった アルモリカン牛生産者組合の会合に来たついでに、うちにも寄ってくださいました。毎年 少なくとも一度は その年に生まれた牝牛の調査に来られるのですが、今回は特に ボラン君を見る のと 今後の交配計画を確認する のが目的でした。
今回 初めて見てもらったボラン君は 合格でした。昨日の話では 6ヵ月頃 離乳時期になったら 人工授精センターに行って、一才半には戻って来るみたいです。うちに戻って来ても、ここのほとんどの牝牛とは ご先祖が共通な種雄牛ですから、うちでは使えません。幸い すでに希望者がいるので、多分 すぐに売ることになると思います。ボラン君は 他の子牛たちのようにかわいくないので、私は平気です。
また、今後も ボラン農場での種雄牛生産計画は続きます。今回、どの牛が どの秘蔵冷凍精液をもらうか決まりました。(ただ、マルキーズだけは 一般に出まわっているけれど 今後更新して行く種雄牛で続けます。)今回 変更があったのは ボラン君の母親、バランチーヌが計画から抜けること。理論上 二つ星(将来の種雄牛候補の母親)が付いていたバルダもベルナデットも 巻き毛のせいで落とされ、一つ星(純粋種または8分の7以上)になったこと。
それから、それから・・・、これ すごくうれしいニュースなんです。みよに 星がふたつ付きました。みよの父親は ロ(Ro)ランという だれでも手に入る種雄牛です。だから、星は一つだけでした。でも、母親のマルキーズも もうそんなに子牛を産めるわけではないので、みよちゃんも 合格にしてもらいました。みよには 今までマルキーズ用だった“マルタノ”が充てられます。もう、何ヵ月も前から、爆発的な発情をするみよちゃん。種付けは今年の夏ごろですから、これからまだ当分 あの叫び声を聞くことになります。でも、よかった。みよちゃんも二つ星で。
みよは 去年の3月18日に生まれた時から 私のお気に入りでした。母親のマルキーズには似ず、人なつっこい かわいい子です。私たちを見ると どうしても頭を掻かせないと気がすみません。

みよが母親に似ているのは 餌の食べ方だけです。2頭とも食べ方がゆっくりです。乾草も味わいながら、ゆっくり食べます。食べるテンポが2倍速い(大食いの)アーニカに比べると、ずいぶん上品に見えます。
さっき みよの写真を撮ろうとしたのですが、カメラを構えてシャッターチャンス なんて待ってるとこうなってしまいます。

しかたがないので、1ヵ月前の写真です。
昨日、満足に餌を食べさせてもらえなかった牛たちは 今朝は早くからブーブー言っていました。そのわりには 飼い主が早起きではなかったため 食堂のオーブンはいつもと同じ時間でした。
牛たちが来る前に、できるだけたくさん乾草を入れておきます。だいたいこれで、一日に食べる量の半分です。牛たちと馬2頭で 約250キロのロール(直径約130センチ)を2日で食べてしまいます。

牛たちが来て、乾草を食べている間に 牛用のチェーンで1頭ずつ つないで行きます。つなぐ順番は 一番強い牛からです。弱いのを先につないでしまうと、後から来た強いのに襲われるからです。ただし、マルキーズだけは いつもみんなの後から来て、おとなしく自分の席に付くので、最後になることが多いです。こちら側はつなぐのが簡単な一年生(一才前後)の席です。

ここで私たちも、お昼ごはんです。
お昼の休憩が終わる頃には 食べるのが速い牛は 目の前がもう空っぽになっています。そこで、第2回目の乾草配給があります。その後、こちら風の(3時ではなくて)4時のおやつです。
牛舎の裏にある ビートのサイロです。今年は寒くないので、葉っぱが生えてきますが、生野菜だから悪くはないはずです。牛たちは Jがここに手押し車でビートを取りに来るころから ソワソワし始めます。

私がビートと呼んでいるのはこういう物です。ビタミンとミネラルが豊富で、食欲が出るのか、乾草を食べる量が増えます。去年から 隣の隣のOさんのところで買っていますが、うちでも作ってみたい作物です。

大きいままだと食べにくいので、こうして切って与えます。バケツ一杯で母牛一頭分、一年生はその半分です。

去年 初めて与えた時は、みんな『なんや、これ ?』みたいな顔をして なかなか手(口)を付けなかったのですが、味をしめたら もう大好物になりました。Jが切り始めると 早く食べたくて大騒ぎになります。もちろん、みんなから見えないところで切っているのですが、音とにおいですぐわかってしまいます。
配給が始まると 騒ぎは最高潮となります。その食べ方と言ったら ここは豚小屋だったっけ と思うほどのものです。
今日は アルモリカン牛生産者組合の会合があったので、Jは朝から留守でした。牛たちの世話があるので、あまり行きたくはなかったようですが、今回は 2006年度年次総会(?)で、しかも Jは事務局の一員です。やはり事務局を務めていて、うちよりずっと北に住んでいるMさんが さそってくれたので、いっしょに行きました。車の相乗りは会長さんの方針で、いつも呼びかけがあります。
さて、牛たちはかわいそうに 今日は食堂がありませんでした。私ひとりでできる と言ったのですが、Jは 危ないからとやらせてくれませんでした。たしかに うちの牛舎は狭くて、餌箱も壁に付いています。だから、乾草を足したりするのに どうしても牛と牛の間を通らなければなりません。角のある牛ですから、べつに悪気がなくても 何かの拍子に角が飛んで来て けがをすることも考えられます。そういう危険な牛舎なのです。
それに 5人組のちびっ子ギャングがいます。私が呼びに行っても、すんなり牛舎に入ってくれません。お母さんたちはとっくに牛舎につながれて ごはんを食べているのに 全く無関心で、どこにでも行ってしまいます。

ところが、Jの時はこうです。何が違うのでしょうか。

なので、今日は無理をしないことにしました。それで、牛たちなのですが、ハラペコで放っておくわけにはいかないので、今の区画の横の区画に行けるように 入り口を開けました。草はそれほどないのですが、新しい区画だと気分が変わります。それに、今日は 風が強かったけれど 珍しく良いお天気だったので、外の方が気持ち良かったと思います。

夕方になると、みんなで前の区画に 水を飲みに来ました。

これで本当に 夜まで持つか少し心配だったのですが、さほど激しい抗議はありませんでした。今日食べなかった分は 明日しっかり食べてくれると思います。
この間 照長土井さんのページ(すみません、リンクのしかた まだわかりません。)で お肉の写真を拝見しました。世界一おいしいお肉です。もちろん、口では表現できないおいしさ だったそうです。それを見て、私は ついうちの冷凍庫に突進してしまいました。アルモリカンの肉と比較しようとしても、比べ物にならないのは わかっていたのですが。

恥ずかしながら、ボラン農場産アルモリカン牛の写真です。食べるのは私たちなので、並のステーキを解凍しました。フィレだとか、サーロインステーキだとか高級なところは お客様用に取っておきます。辞書で調べたのですが、これは肩の部分だそうです。真ん中に入っているのはスジではなくて ゼラチン質です。これは32ヵ月の牝牛(ビタミン)なので いつもの《最低36ヵ月の去勢牛》に比べて サシが少なめで 色もうすい方です。
ところが フランスの消費者にしたら、サシはこれが限度なんです。うちのお得意さんたちは こうでないとおいしくないのを納得してくださっていますが、一般の人は違います。肉はあくまでも赤身というイメージなので、サシが入ると《うわー、気持ちワルーい。》となります。9月に 4才を過ぎた去勢牛を販売した時は、今回よりも若干サシが多かったのですが、初めて買いに来てくださったお客様が 商品を見てしかめっ面なさいました。
このあたりは田舎なので、お肉屋さんはありません。お肉は スーパーで買うことになります。スーパーだけで見ると、一番多いのは、ホルスタインです。酪農が盛んなのと、乳牛は4才になるとそろそろ引退するため、かなりの量の肉が出まわっています。一回の泌乳サイクルで 1万リットル近く生産する牛です。まだ若いわりには、肉はかたくておいしくありません。
もっとおいしいお肉を食べたい となると、肉専用種です。有名なシャロレがそうです。それに、リムザンとブロン・ダキテーヌが フランスの三大肉牛です。どれも赤身のお肉です。本を読むとシャロレは霜降り(ほどではないはず)とか書いてありますが、私たちがお目にかかるシャロレのお肉は 真っ赤です。シャロレの原産地に住んでいる友達が スーパーの肉売り場で働いているのですが、シャロレはおいしくない と言っていました。
では、なぜフランス三大肉牛なのか と言うと、どうも生産性の話らしいです。どれも もともと体格が大きくて、子牛の成長も速いので、若いうち(18ヵ月)にお肉にできます。また、お尻の肉付きが良くて、枝肉/精肉(日本とは切り方が違いますが)の歩留りは 少なくとも60パーセントです。それに、余分な脂身が付かないので、切り分ける作業が短い時間でできます。業界にしたら、理想のお肉です。シャロレ、リムザン、ブロン・ダキテーヌだったら、市場でも高い値段が付くので、生産者はだんだんそれ以外の種類や雑種は飼わなくなります。こうして、赤身だけのお肉が 主流になったのだと思います。
数ヶ月前、近くの村で学芸会みたいな催しがあって、アルモリカン牛保護の闘いの話をしてくれと Jが招かれました。その時、例の《うわー、気持ちワルーい。》のお肉を 試食のために持って行きました。うちのオーブントースターにやっと入った 1キロ近いローストビーフです。肩ロースだったので、ミニ霜降り程度のサシが入っていました。その冷たくなったのを薄切りにして お客様に食べてもらったのですが、評判はとても良かったです。サシは もちろん調理すると 融けてなくなってしまいます。また、そのおかげで 赤身がしっとりするのです。そう言えば みんなわかってくれるのですが、実際にサシが入ったお肉を見てしまうと、ダメみたいです。
いつも思うのですが、普通の枝肉よりずっと手間のかかる うちのアルモリカン牛を いやな顔もせず引き受けてくださる業者さんがいて ありがたいことです。冷蔵庫での熟成期間は 普通より1週間長い15日で、切り分ける時には ちゃんと余分な脂肪を取り除いてもらって、見栄えの良い仕上げにしてもらっています。私たちも あまりひどいものを持って行って、もうアルモリカンはこりごり と言われないように、気をつけないといけません。
アルモリカン牛は 何を食べても太る牛です。牧草だけでもデブになります。T村には その昔、アルモリカン種雄牛を持っていた たいそう大きな農家があったそうです。種雄牛は 農家の誇りですから、しっかり世話をし、食べ物は充分与えます。ある日 地方の大きな品評会に参加するため その雄牛を牛舎から出そうとしたら、大きくなり過ぎて出られなかったそうです。しょうがないので、壁を壊して出した というのが 今でも語りぐさになっています。そういう素質のある牛ですから、脂肪太りにならないように うちでは 濃厚飼料はおろか、大麦も与えません。冬も乾草だけです。メスだけは 冬に子牛を産むので、おやつにビートを切ったのを与えます。餌が大変安上がりな牛です。
さて、写真のお肉なのですが、テフロン加工のフライパンで、バターもオイルも使わずに焼いて、塩・コショウしていただきました。Jは ナイフを入れて『おぉーっ、柔らかーい。』、お肉を口に入れて『うーん、おっいし~い。』と椅子から飛び上がりました。いつも食べてるくせに。アルモリカン牛は 黒毛和牛の足下にも及びません。でも、うちはうち。これで良いんだ という気持ちになりました。
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