ボラン農場の牛たち

アルモリカの小さな村からアルモリカンArmoricaine牛たちのお話をお届けします。

ふみちゃんの息子プラス1 マイナス1(=0)



ママ(ふみちゃん)とかくれんぼするマックスくん。

生まれたのは20日の朝早く。

前日の夜、ふみちゃんがなんとなく産みたそうな様子だったので、急きょ牛舎に収容しました。その日は北風が強く、朝方の気温は、0℃近くまで下がる予想だったので。

ふみちゃんは、真夜中にフーフー言い出し、朝の4時頃イキミが激しくなったので、急いで牛舎に駆けつけると・・・

早く立ち上がろうと、もがく大きな子牛が。

ふみちゃんは、産んでからの方が叫び声が大きかったです。

すぐ側にいたから、心配で時々見に行ってたけれど、ふつうにみんなと外にいたとすると、《朝起きて見に行ったら、子牛が落ちてた》の安産でした。

子牛は、とにかく元気で、骨格のしっかりした大きな男の子で、《マックス》と名付けました。ふみちゃんの三産目の三男です。

ふみちゃんは、ボラン農場では最もアルモリカン牛らしい良い牛なのですが、DM(ブタ尻)遺伝子を持っていて、また、爪に弱点があって、もうずっと前から淘汰することを決めていた牛です。

それが、肥育牛としてジョンさんちにいた時に、よその子におっぱいを飲ませるという事件が起り、そのおっぱいを飲んだ牛がお肉になり、ふみちゃんは、もう一度繁殖牛に復活した、という経緯があります。

ふみちゃんが去年産んだオスが、あのおとなしくてかわいい《リュリュ》です。おしりが大きくて、つい触りながら『おいしそ〜。』と言ってしまいます。

そして、21日には、ふみちゃんの長男、《iマック》がお肉になりに出発しました。

長男も、おとなしくて扱いやすい牛です。さんざん迷った末、体型からすると赤身ばっかりで、これ以上大きくなっても肉質が良くなる見込みがない、と判断した結果です。

出発の日は、Jおじさんがいつものトレーラーに乗せて連れて行ったので、本人(本牛も)他の牛も動揺することもなく、静かに、まるでそれがふつうのように事が運びました。

おかげで、iマックくんの写真を撮るのをすっかり忘れてしまいました。
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あきらめない



ボラン食堂が開店して、もう二週間になります。お天気しだいでお昼前もしくはお昼過ぎに食堂へ、というリズムに慣れた牛たちは、牛舎裏に通じる柵の前でのんびり待つのが日課に。

あの二頭の問題児は、ようやく、どうにか、いやいやながら、自分の席まで行くようになりました。でも、Jおじさんが近づくとバックして逃げようとするので、おしりを押さえておく必要があります。

毎年、一年生を教育する時、必ず劣等生が一頭いるものですが、こんなに時間がかかったことはありません。しかも、二頭。みんな同じように教育してるつもりなのに、持って生まれた(悪い)性格を矯正するのは無理なんでしょうか。

去勢牛のラン君は、これでジョンさんちに連れて行って去勢組に入れて大丈夫でしょう。ただ、こんなに怖がりだと、おいしいお肉にはなれないかも知れないけど。

お肉になる時の牛のストレスは、私達にはどうにもできない大問題です。と畜場までの移動は改善できたものの、Jが自分で連れて行くことで、と畜場の環境の悪さがわかりました。Bio牛だから、普通の牛たちよりもマシな扱いを受けるはずなのに、トレーサビリティーの考慮以外は、特にストレス軽減については何もしてくれないようです。これについては、また改めて書きたいと思います。

さて、怖がり牛二頭もふつうにつながせてくれるようになって、ホッとした昨日のことです。

(工事中の)家の中にいたら、突然牛舎からすさまじい叫び声が聞こえました。牛が非常事態に遭遇した時の叫び方です。あわてて牛舎に駆けつけると、

Jが牛舎の入り口にいて、中を見ていました。乾草をいっぱい食べて喉が渇いた牛たちに、バケツで水を飲ませていたところです。

なんだ、いたのか、と思ったのですが、Jはあわてている様子はありません。なぜなら、

(超怖がり牛の)リリーの横にバケツを置いたら鼻で触って、水が動いたのを見て、パニックになり、大声を上げ、餌箱に飛び込もうとした、

のだそうです。 

子牛はみんな、赤ちゃんの時にバケツで遊んでいるはずなのに。リリーは遊ばなかったのか? ほんとに怖がりにもほどがあります。

もうすぐ一歳になるリリー。あと6ヵ月ほどしたら人工授精をして、来年は母牛になるはずです。でも、今のままでは、人工授精なんてさせくれないだろうし、子牛が生まれたとしても、正しい教育ができるわけありません。

リリーは大柄の美女だから売れるだろうし、種雄牛を持っている完全放牧の牧場なら、こんな性格でも問題にはなりません。

でも、Jの方針で、どんな牛でもとりあえず初産はボラン農場でさせることになるでしょう。

あの(実は大の怖がりで)野生牛だったマルキーズも、今はおとなしいおばあちゃんになりました。

時間はかかってもあきらめない、といつまで言ってられるかわかりませんが。

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