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ボラン農場の牛たち

アルモリカの小さな村からアルモリカンArmoricaine牛たちのお話をお届けします。

迷子の子ねこちゃん

それはそれは暑かった日のことです。(たった2日間だけ。)
乾草を巻くロールベーラーに来てもらうことになっていて、Jおじさんは、トラクターに乾草の畝を作るマシンを付けて、ジョンさんち牧場(去勢たちがいるところ)に行きました。

朝からお日さまが照り、湿気もないので、本当はもっと早く始められたのに、もう、お昼近くになっていました。さすがのJおじさんも、ロールペーラーが来るまでにやってしまわないと、とかなり焦って出て行きました。

出て行って間もなく、Jから電話があり、ジョンさんち牧場まで至急来い、と。

オスカルを連れて来てはいけない、と言うので、オスカルくんは納屋に閉じ込めて、私だけ車で飛んで行きました。

以下、Jの説明です。

『牧場の柵を開けて中に入ろうとしたら、お屋敷の門からちっちゃなねこが出て来て、ぼくに向かって歩いて来るねん。それも道路の真ん中を歩くから危ない、と思って、すぐに抱き上げてトラクターに乗せてん。昨日、ジョンさんの容態が悪なって、また病院に運ばれたみたいやから、家には誰もいないはずやし、もしかしたらジョンさんの生まれ替わりか、と思って・・・。(いえいえ、ジョンさんは健在です。)』

この子を放っておくと、車にひかれてしまうから、とボラン農場にとりあえず連れて行こう、ということだったんです。

子ねこがパニックになって車の中で暴れてはいけないので、Jが抱いて車に乗り込みました。
そして、子ねこを工事中の家に閉じ込めて、Jをジョンさんち牧場まで送りに行きました。

おかげで、すでに予定より遅くなっていたのが、大幅な遅れになり、Jおじさんはお昼ごはん抜きで作業することになりました。(私の知らないうちにビスケットを食べたらしいけど。)

Jに、戻ってくるまで見といて、と頼まれた子ねこは、こんなんです。

160722.jpg

黒猫のせいか、『ミャー』って話しかけられても、正直言って、私にはかわいいとは思えない顔をしています。

でも、Jは、美しくてかわいい、とお気に入りです。Jの両親は猫好きで、家で飼っていたのはいつも黒猫だったそうです。そのせいか、黒猫だからなに? と全く気にしません。それどころか、いやに人なつっこくて、かわいくてしかたがない様子です。

この辺りによくいる野良猫とは全く違うタイプで、迷子か捨て猫としか考えられません。迷子にしては、首輪もしていないし、誰か探しているような気配もないし、捨てられた可能性の方が大きいような・・・。

うちには、ねこは2匹いるのにどうしようか、と言いながら、もうすでにうちの子のようになった子ねこちゃん。どうやら女の子らしいけれど、まだ名前はありません。Jの猫だから、Jの好きな名前にすれば良い、と私は『にゃんこちゃん』と呼んでます。

どこかのお家で飼われてたらしく、ひとりでお留守番できるし、トイレもちゃんとわかってました。今のところ、オスカルも、おとなしく子守のようなことをしてくれるし、どうにかなりそうです。

追記 : ジョンさんの奥様によると、やっぱり捨て猫らしいです。夏のバカンスの時期は、お屋敷の向かいの採砂場に捨てて行く人が後を絶たないとか。奥様は、お屋敷の庭に黒猫のにゃんこちゃんを見つけた時、縁起が悪い、と追い払ったそうです。
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片目のももたろう


草に埋もれながら食べる子牛たち

牛たちはもうとっくの昔に南側の牧草地に移動しました。
私が翻訳や通訳の仕事であたふたしている間に、イノックスの販売、ジゼルの人工授精やり直し、急にお天気が良くなって乾草収穫開始、子牛3頭の去勢、ととんでもない忙しさでした。

いつもなら、子牛たちの顔をじっくり見ているのに、牛たちがちょうど家の近くにいたこともあって、遠くから様子を見るだけで済ませました。

大至急の翻訳の仕事を片付けた日、久しぶりに近くまで牛たちを見に行ったら・・・,

ももたろうの左目が閉じたままで、たまに開けると白いものが!

以前、子牛たちがかかったことがある角膜炎です。
ちょっと前から、ももたろうが左目をしょぼしょぼさせていたので、注意していたのですが、ちょっと良くなったから、と手抜きし過ぎでした。

すぐに、Jおじさんに薬を買ってきてもらい、治療のため、ももたろう/イッチー親子を牛舎に収容しました。
獣医さんの処方箋によると、塗り薬を1日に一回、となっていたけれど、薬の取扱説明書には、1日に二回、と書いてあったので、毎日二回、その度に牛舎横の小さい牧草地にいる親子を連れて来て、牛舎につないで、せっせと治療しました。

ところが・・・,

一週間経っても、ももたろうの左目はいっこうに良くならず、今日、Jおじさんは、前にもらってよく効いた別の塗り薬をもらいに、獣医さんまで行きました。

なんで、はじめからよく効く薬をもらわなかったの、と思うでしょう。
前によく効いた薬は、乳牛がよくかかる乳房炎の薬です。小さいチューブ1本あれば、子牛2~3頭の治療に充分でした。それほどよく効く薬で、一週間も塗り続ける必要はありませんでした。

それが、前は一個ずつ買えたのに、今は12個入りの梱包になって、バラでは売ってくれない!

1本あれば充分なのに、12本も買えばけっこうな値段だし、使用期限が一年で、1本か2本しか使わないのはわかりきっているので、当初、しょうがなく別の薬をもらって来たわけです。

その薬が全く効かなかったので、よく効く方をもらいに再び獣医さんに交渉に行ったJおじさん。
1時間後に手ぶらで戻ってきました。

どうしても、バラ売りはできないそうです。

かわいそうなももたろう。目が開けられなくて、開けても見えなくて、おまけに去勢されたあとが腫れて・・・。
もともとおとなしい子で、一週間もママといっしょに牛舎を出たり入ったり、一人前につながれたりして、せっかく立派な良い牛になりつつあるのに、左目が見えなくなったら本当に残念です。

鬼をやっつけに行った桃太郎さんが、もしも片目だったら、って想像して見てください。正義の味方のはずが、海賊かなんかの悪者に見えるじゃないですか。

片目のももたろうなんて、絶対に許せないので、Jは、ヤミで例の薬を手に入れる方法を検討しています。(乞うご期待。)