このところ急に寒くなったボラン農場です。土曜日なんか、気温が2℃まで下がり、最高気温も5℃で、Jおじさんが『雪になるで。』と言ったら、本当に雪が降りました。すぐに雨に変わったけど、10月に雪なんて、初めてのことです。
さて、今朝は、馬の爪切り屋さんに来てもらいました。ボラン農場のおんまさんたちは、蹄鉄を付けていないので、長く伸びた蹄を切ってもらうだけです。
Jおじさんが自分で手入れできる前足だけではなく、後ろ足も、となると、ちゃんとした枠が必要です。そして、その中に入るだけでも、慣れていない馬にしたらものすごい恐怖です。
いつもはおとなしい(どちらかと言うとぼぉーっとしてる)ごはんくん(1歳半)は大暴れ。けがをしないか心配になるほど抵抗してくれました。ごはんくんはまだ小さくて、軽いから、どうにか取り押さえられたけど、おかずくんは・・・、

意外とリラックスして、半分寝てます。獣医さんが怖くて、獣医さんの車が来ただけで、手をつけられないほど暴れる子だとは思えません。
多分1トンはあるだろう超大型馬に本気で暴れられたら、どうなっていたことでしょうか。(獣医さんは注射でおとなしくさせた。)来ていただいた爪切り屋さんは、輓馬専門なので、枠も特別丈夫にできているでしょうけど。
ブルトン種は、一般的におとなしく、調教しやすい馬です。中でも、おかずくんのように、自分で考えて行動できるかしこい子は貴重です。
ブルトン種を知り尽くしている爪切り屋さんだから、やっぱり、あのことが話に出ました。
今、人といっしょに仕事をするブルトン種の輓馬が、絶滅の危機にさらされています。
いえいえ、アルモリカン牛の時のように、頭数が激減しているのではありません。そうではなくて、生まれる子牛がほとんど全て肉用に買い占められているからです。おかげで、おかずくんが生まれた年は、子馬1頭600ユーロから買えたのが、ごはんくんの年は1000ユーロ、今年は、なんと1600ユーロに高騰しているとか。(比較のため : アルモリカン母牛1頭1300ユーロから。)
子馬を肉用に高く買い取ってもらえるのに、調教していっしょに仕事をしたい、という人にそれ以下で売ってくれるわけがありません。あんまり高いので、農作業用の馬が必要な人は、ブルトンはやめて大型のポニーで代替えしているそうです。
今までは、フランス国内の馬肉の消費が減り、繁殖用または調教用に売れ残った子馬だけが、安い値段で肉用に買い取られていました。言わば、輓馬や乗馬に向いていない子馬が淘汰されていたわけです。
ところが、数年前から子馬の値段がバカ高くなり、人と仕事をする資質のある馬が、生き残れなくなっています。その張本人が・・・、
日本人 !
と言われてますよ。その高い馬肉の行き先が日本だから。Jおじさんのように馬と仕事をするのが大好きな人たちから、日本人は悪者にされてます。
でも、本当の悪者は、子馬の高値のおかげで大儲けしている人たちであって、一般の日本人には関係のないことですよね。
私には、他人のビジネスをとやかく言う権利も何もありません。でも、《ボラン農場の牛たち》を読んでくださっている方々には、今、フランスのブルターニュ地方で、貴重なブルトン種の輓馬が危機に直面していることを、知っておいていただきたいのです。
スポンサーサイト

霧のち晴れ、が続くボラン農場です。秋晴れももう終了寸前で、この後は雨が並んでます。特に、気温が冬並みに下がるとか。
さて、昨日は、ボラン農場名物の巻き毛牛の一頭、まさおくんのお見送りをしました。
まさおくんが生まれたのは、忘れもしない、あの古いピアノが来た日。あれからもう3年近く経ったなんて、信じられません。
Jおじさんが運送屋さんを頼んでピアノを取りに出かけた直後産気づき、4時間苦しんだジャネットママ。Jおじさんがやっと戻り、引っ張ってもらってやっと生まれたのがまさおくん。新米ママはワケが分からず、赤ちゃんを放り出して、みんなの所へ。産み落とされたままのまさおくんは、私がタオルで拭いてやりました。
それから、ジャネットを連れ戻し、まさおくんが自分の子であることを認識させて・・・、と通常より手がかかったお産でした。
くるくる巻き毛で、ぬいぐるみのようにかわいかったまさおくん。それは、大きくなっても変わりませんでした。
今までの経験から、巻き毛の牛は皮下脂肪が薄く、サシの入らない肉質と見て、早めの出荷を考えていました。夏に見た時は、大きいけれど胴が短く四角い体をしていたので、年上のももたろうくんより先に行ってもらうことに。
ところが、ジョンさんち牧場にお迎えに行って見ると、まさおくん、いつの間にか良い体型に。胴は長く、お尻は丸く・・・。ほんの短い間にこんなに変わるものか、と驚きました。そして、相変わらず全身クルクル巻き毛のぬいぐるみ。いきなりお友達から離されて、落ち着かない様子だったけれど、泣くこともなく、おとなしく牛舎で寝てくれました。
翌朝、出発の準備を始めた時、一声発しただけで、あとはあくまでもおとなしく、トレーラーにもすなおに乗ってくれたまさおくん。こんなにかわいい子だと、連れて行くのが本当にいやになります。
まさおくんがいたおんまさんボックスを掃除しながら、あんなにかわいい子を食べることをどうやって正当化しようか、ぼやっと考えてました。
しばらくして帰って来たJおじさんから、今回は待ち時間もなく、よその牛はもういないレーンを進んで行くまさおくんを見送った、と聞いて、少しほっとしました。

朝は霧、続いて晴れの日が続くボラン農場です。毎日青空で、Jおじさんはごきげん。クリスマスまで雨はいらないそうです。
そんなある日の午後、家でデスクワークをしていて、ふと外を見ると、芝生の上に赤牛が!
『なんでこんなとこに牛やねん?!』と私。
その叫び声に、どこか遠くの方からリアクションがあったような・・・。
家の前で草を食べていたのは、リラ。牛舎裏から脱走して来たようです。そこは、他の牛たちがいる放牧地の入り口から10メートルもない所。みんなに合流しに行くより、まずは腹ごしらえ、とリラらしい行動です。
今までにそのへんで、子牛がうろうろしていたり、おんまさんが外から家の中を眺めていた、というのはあったけど、大きな牛は初めてです。芝生の上に大きな落し物をされないうちに、急いでリラを捕まえに。
元いた牛舎裏に押し返そうとしても、脇見して隣の小さな牧草地に行ってしまったリラ。新鮮な草を夢中になって食べ始め、なかなか手こずったけれど、あわてて駆けつけたJおじさんの支援もあり、無事(落とし物もなく)牛舎裏へ。なぜかオージーくんが牛舎裏に居残っていたのが幸いしました。
脱走を起こした犯人はJおじさん。単なる柵の閉め忘れです。
その時、オージーくんの5回目の注射をする直前でした。母子でみんなの所へ戻っていたら、大変めんどうなことになっていたでしょう。ちなみに、オージーくん。5回の注射が終わって様子を見ているけれど、びっこはおさまったようです。ひざが変形していたように見えたのは、コブでした。見た目は良くないけれど、歩くのに支障なければ放っておくしかありません。
さて、リラを追いかけて、草が伸び始めているのに気が付きました。雨も、夜の間に、少し降ったし、カラカラ状態は解消かな。朝は気温がけっこう下がり、うっすら霜も降りるけど、そこは土地育ちの丈夫な草たちです。冬が来る前に、もう一度伸びて、牛たちがボラン農場をもう一周できるといいな。
予報よりうんと少ない雨が降った後、ここ数日風が吹き荒れるボラン農場です。せっかく潤った地面も、この風で乾いてしまいそうだけど、明日また雨が降るらしいので平気平気。
でも、平気じゃないのがオージーくん。5日間注射をして、熱も38℃まで下がり、左前脚の腫れも引き、びっこも引かなくなったのに・・・。放牧地に戻って、間もなくスフィンクス。やっぱり左脚です。
一昨日の朝は、そんなにびっこじゃなくて、左ひざもほとんど腫れてなくて、このまま自然に治るかな、と期待したのは大間違い。昨日見たら、本格的なびっこになり、ひざも完全に腫れてました。
リラ - オージー母子は再び牛舎へ。また最低5日間続けて注射なので、牛舎裏で寝泊まりしてもらいます。
前回の滞在で草がほとんどなくなったので、ちょうどそこに置いてあった草架に乾草ロールを入れてもらいました。小さいベール(10キロ位)だと数時間で平らげてしまう大食いママなので。これで何日持つでしょうか。放牧地に置いてあるロールは、ほとんど3日持ちます。成牛はマルキーズも入れて9頭。計算上、リラ1頭が5日で食べてしまうはずありませんが。
牛舎裏で食べて、牛舎に入っても食べて、一日中食べてばかりのリラ。飲むお水の量も多いし、すると出て行くものの量も多くて、お掃除がめんどうです。
で、今日のテーマのオージーくん。注射をするとすぐにびっこはなくなりました。熱もなし。でも、ひざは変形して腫れたまま。5回注射しても完全に治らなかったらどうしよう。

オージーくん、女の子と間違うほど脚が細くて、それでいてお尻の幅が広くて、ふわふわの毛で、どこを取っても私好みの子です。でも、虚弱体質だと、大きくなってもお肉にしかなれないよ。(おいしいお肉にはなれそうだけどね。)
久々に雨のボラン農場です。これだけ降れば、牧草地に緑が戻って来るわ。
左脚が腫れて5日間注射を受けたオージーくんも、びっこを引かなくなり、平熱になったので、ママといっしょにみんながいる放牧地に戻りました。
まだリラ - オージー母子が牛舎裏にいた間、ヌリアちゃんの人工授精がありました。2回目です。
1回目は9月のはじめ。なんとなくそわそわして、時々大声を出したヌリアちゃん。まあまあ、前回の発情から数えて妥当な日数。人工授精センターに通報する前に、本当に発情なのを確信すべく、決定的な兆候を待っていました。
でも、そういう時に限って何も起こりません。
しばらく待って、時計を見ると、12時15分前。午後の人工授精受付終了まであと15分。もう最後の手段、と私の目の前に突っ立ったままのんびり反芻していたヌリアちゃんのお尻に手を置いて、マッサージを始めました。発情している牛は、そうされるとしっぽを上げるものです。
でも、ヌリアちゃん、全く反応なし。
やっぱりダメか、と引き上げかけると、近くを通りかかったリラが、いきなりヌリアちゃんのお尻に乗っかりました。ヌリアちゃんは逃げもせず、まんざらでもなさそうな様子。私は、急いで家まで電話しに走りました。
それが1回目。授精師さんもごく普通にしていたから、間違いなく発情だったはず。
ところが、その12日後の午後に、ヌリアちゃんはまた大騒ぎを始めました。
その時は、もうみんな南側の放牧地。ヌリアちゃんは、大声で叫びながらひとりで放牧地を行ったり来たりするにとどまらず、土手の向こうにいるお隣のリムザン去勢たちに向かって呼びかけてます。(種雄牛がいなくてよかった。)
どう見ても発情のようだけど、他の牛たちは完全に無視。その日はパスして、次の朝何度も見に行ったけれど、叫ぶばかりで何も起こらず、人工授精のやり直しはしませんでした。
そして、それから16日経った夜、ヌリアちゃんは、またまた大声で騒ぎ始めました。今回は、ほとんど休みなく叫び続け、寝たかな、と思っても、夜中にわざわざ家のすぐそばに来て大絶叫。その声を聞いて、牛舎裏で寝ていたリラが返事をするし、えらい近所迷惑です。
朝になって、今度こそ人工授精のやり直しをしよう、とヌリアちゃんを捕まえに。相変わらず大声で何か叫びながら、本人(本牛)もやる気満々で、早足で牛舎裏まで迷わずずんずん進んでくれました。
牛舎裏では、叫ぶヌリアちゃんを待ち構えていたリラが大歓迎。いきなりヌリアちゃんの後ろから乗っかりました。
人工授精が済み、みんなのところに戻った後もまだ興奮状態だったヌリアちゃん。今回はちゃんとタネが付きますように。
これで2回目だから、チャンスはもう一度だけ。いえ、べつに何度やり直してもかまわないけれど、今までの経験から、3回発情しても付かない場合は、何度やってもダメでした。まあ、それはまたその時に考えるとして、今後も監視体制を続けます。
ほんとにほんとにかわいいヌリアちゃん。

斜面でヘンな格好してるけど、実物はミス・アルモリカン級の美少女です。
ちょこっと雨が降った後、またまた秋晴れが続くボラン農場です。もういいかげん雨になって欲しいところだけど、やっぱり青空だと心も晴ればれするものです。
今、牛たちのいる南側の牧草地は、もうカラカラの北側に比べるとまだ多少緑が。

“大畑“が大好きな牛たちは、草を探して歩き、飽きたら一つ上の牧区に乾草を食べに来る日々。そこは家のすぐ横だから、いつでも水桶に水が入ってるし、天国だわ。
朝晩はぐんと寒くなったけれど、みんな機嫌良く元気・・・、と言いたいところだけど、一頭だけ具合の悪そうなのが。それをJおじさんに言うと、
『また、あいつか。』
“あいつ” と言うのは、オージーくんのことです。
獣医先生に耳を診てもらった数日後、なんかびっこ引いてるような感じだったオージーくん。そのうち本格的なびっこに。
関節炎じゃないかと心配したけれど、ひざの腫れはなし。Jおじさんは、子牛同士で遊んでてアホなことしたんやろう、と全く気にせず、しばらく様子を見ることにしました。
私が仕事で家を留守にして、2日ぶりにオージーくんを見に行ったのが土曜日の朝。私がいない間、気を付けておくようにJおじさんに頼んだのに、いつ行っても寝てたとか。(それだけでも心配じゃない?)
オージーくんは、左脚全体が腫れて、その足を前に投げ出した格好で寝そべってました。(これをスフィンクス座り、と呼ぶの知ってました?)
それでも、私が行くと立ち上がって、残りの3本の脚で器用に走る走る。
それだけの元気があれば命に別状はなし。でも、オージーくんはまだ1ヶ月の赤ちゃんです。急に容態が悪化することも考えられるので、獣医診療所に電話で相談し、また先生に来てもらうことになりました。
今回も、先日耳を診てもらったR先生。本人(本牛)は元気だし、特に心配することはないけれど、自然に治るまで放っておくと発育の妨げになるので、抗生物質の注射をしてもらいました。
それから4日間は、毎日注射を続けないといけません。今まで筋肉注射をしたことのないJおじさんが挑戦。(私にはムリ。)けっこう上手にできて、オージーくんは動きもしませんでした。
オージーくんとリラ母子は、治療が終わるまで群れを離れて牛舎裏に。幸い、リラは食べるものがある限り文句も言わず、おとなしくしています。オージーくんも、やっぱり疲れるのか、今のところ囲いから脱走もなし。
みんなそれぞれ、穏やかな秋を過ごしています。
| ホーム |