私たちが 去勢くんたちがいる羊飼いのジョンさんちに出発したのは 11時頃でした。お迎えが来るのは午後の2時半の予定だったのですが、少し余裕を見て 早めにアトムを出荷柵に入れることにしました。
放牧してある牛を捕まえてそのままお肉にする と言うと驚く方もいらっしゃると思います。牛は《肥育》するんですよね、普通なら。うちでも 枝肉で400キロないともうけが薄いので《肥育》したいのですが、さて 何を食べさせよう ということになります。いろいろ調べた結果 おいしいお肉には《草》が一番だそうです。草なら うちにいっぱい生えています。うちの牛たちは 一年中草(青草)が主食です。冬も雪が積もらない限り草があるので、足りない分を乾草で補う程度です。特にジョンさんちは一頭あたりの面積が広いので 去勢くんたちはほとんど乾草も食べません。
じゃあ、私たちは肥育も草で行おう ということにしました。草だったら放牧地にいろんな種類が生えています。だったら わざわざ牛を牛舎に入れて 草を刈って食べさせるよりも 牛に自分で好きなものを好きなだけ食べてもらおう ということになりました。私たちがずぼらなんですけど、牛にしても きっと 自然の中で自然にしてる方が元気だと思います。(こんなことをしていると、枝肉で400キロに3年以上かかります。)
ジョンさんちに着いて 木の下で寝そべった去勢くんたちを見るなり Jが『これから何が起るか 想像もしてないんや。』と言いました。朝のうちにも 今度から野菜作りに転業しようか と言っていたJです。牛をお肉にするのが よっぽどつらいようです。
時間はたっぷりあるので、去勢くんたちがいた放牧地から出荷柵の前まで しずしずとゆっくり歩かせました。途中 栗の木の下で みんな夢中になって葉っぱを食べ始め 進まなくなってしまいましたが、ある程度お腹に詰め込んだら またゆっくり歩き始めました。去勢くんたちが出荷柵の前の小さな牧草地に入り、後にいた私が柵を閉めると 燕麦の入ったバケツにつられて 年長組の3頭が出荷柵の中に入って行きました。

いつも 年長組から一歩下がってついて来る 年少組の(でも、大きくなった)アスプロ(左)とブルータス(右)です。出荷柵には入りませんでした。

その後 年長組が燕麦を食べ、少し落ち着いてから アトム君を柵につなぎました。後の2頭は 外に追い出されました。
この顔(特に目)に見覚えありませんか。イッジーばあちゃんの息子(よく似てません?)アルフォンスです。ボリュームもあり 36ヵ月が楽しみです。

こちらは つぼみちゃんの子、アルセーヌです。年長組の中では一番若いのに 一番重そうです。Jいわく、《脂肪だらけ》だそうですが 私が見た感じではおいしそうです。

ひとり取り残されたアトムくん。

こうして見ると 怖がりで、足くせの悪い牛には見えません。このたれ目と 顔の下の方に付いたばかでかい耳は 《リリー》系の特徴です。ボラン農場最初のアルモリカン牛(のつもり)だったリリーも アトム君が最後の末裔でした。
業者さんのトラックにも 暴れず素直に乗ってくれました。いつも そうなんですけど みんなすんなり乗ってくれるので かえってかわいそうになってしまいます。
バイバイ、アトム。今度は牝牛になっておいで。