昨日は 牛たちが北の果ての区画に移動しました。

いつもながら察しの良い牛たちです。柵が開くと あっと言う間に全員通路になだれ込み ものの数分で目的地に着いてしまいました。いつもはのろのろ歩きのイッジーばあちゃんも けっこう急いで歩いてくれました。
でも、こんなに急いで牛たちを移動させたのには理由があります。
昨日の朝のことです。いつものように朝の見回りに牛たちのところに行くと、ユプサの挙動が不審でした。土手のすぐ前で 何かを探しては食べています。土手にはオークが植わっていて、今年はあらゆる木の実や果物と同様に どんぐりも当たり年です。心配していた通り、やっぱりユプサは どんぐりをあさっていました。
猛暑だった(と記憶しています)2003年もどんぐりが大豊作でした。夏の間に牧草が枯れてしまい、牛たちはお腹を空かせていました。木からが落ちるどんぐりは 神様のお恵み と思ったら大間違いです。どんぐりは 食べ始めるともっと食べたくなる中毒症状を起こし、それがひどくなると ついに死んでしまうこともあるそうなんです。
ポラン農場では どんぐりがきっかけで 乳牛フロマン・デュ・レオン種のジュリーを死なせてしまいました。私たちは そんなことも知らず 牛たちがどんぐりを食べていても 全く気に留めませんでした。(マルキーズなんかけっこう食べていたみたい。)
ジュリーは ある日何も食べなくなり、反芻もしなくなり、土手ぎわでボーッと突っ立っていました。動作ものろくなり、どう見てもおかしいので 獣医さんを呼ぶことにしました。
獣医さんは すぐにどんぐり中毒を疑い、弱っていたジュリーに注射をしました。カルシウム注射の最中に ジュリーは心臓麻痺で苦しみだし、私たちがおろおろしているうちに息が絶えてしまいました。
ジュリーは大型牛で、アルモリカン牛の倍は食べるくせに 泌乳能力は大したことはありませんでした。また そのミルクは脂肪分が高く、クリームを取ってしまうと水分しか残らないという代物でした。だから口では どうしようもない牛 とは言っていても 生まれて一週間でポラン農場に来て、私たちが哺乳瓶で育てた子です。自分のことを牛だと信じられず『なんで私を牛といっしょにするの ?』と問いかけて来るような おもしろい子でした。
ということがあったので どんぐりには要注意です。
今朝 新しい牧草地に見に行くと ユプサも他の牛たちも無心に《草》を食べていました。朝の気温もますます下がり 今朝は 草を踏むとシャリシャリ音がするような気がしました。寒さで草が所々黄色くなっているところもあり、草がおいしい季節ももうそう長くはないでしょう。今のうちにしっかり食べておいてね。