そのAさんは、ここからもっと西に行った隣の県で、年に1万1千リットルもの泌乳力を持つホルスタインをメインに、ご主人と大規模な牧場を経営されているそうです。お供のMくん(3才)もめちゃかわいかったけれど、Aさんは、エネルギーのかたまりみたいな方で、興味のあることに対する熱心さや行動力には圧倒されるばかり。
その新しいチャレンジの一つが、この地方産の牛であるアルモリカン(牝牛だから本当はアルモリケヌ)の泌乳能力を試すことで、これには私たちも、ものすごく興味があります。この話はまた改めてすることにして、早く表題に移ります。
電話でお話しした時、Aさんの牧場では、アンガスも飼っている と聞き、今度は私たちの方が興味を持つことになりました。和牛以外では、世界で一番おいしい とされているアンガスは、フランスでは、アルモリカンに負けないくらい珍しい種類です。何年か前に調べた時は、フランス全国で数カ所にしかいなくて、見学に行くには遠い所ばかりで、私たちにとって、アンガスは幻のお肉のままでした。
さて、Aさんのもう一つの特色は、日本が大好きで、日本語を勉強していて、日本人のお友達も多く、一年に二回は日本に行くことにしているそうです。(うらやまし~。)だから、当然おいしいお肉のお手本は、和牛。そうです、Aさん牧場のアンガスは、サシが入るように育てられているのです。マッサージにビール。そうして肥育されたのがこれ。

もっと近くで。

和牛の霜降りを見慣れている方には、どうってことないかも知れませんが、このアンガスくんは、18ヵ月 と聞いて、ため息が出ました。うちで言うと、ジョンさんちに行ったばかりの去勢たちがこの年齢で、まだ背ばっかり高いガキです。この骨付きリブが、1キロ100グラムだったので、枝肉の重量は、500キロ近かったのでは と思います。(うちでは、このところ400キロ以下で、リブ一本900グラム。)後日送っていただいた写真を見て納得したのですが、アンガスは、アルモリカンより数倍成長が早そうです。
月曜日にいただいたこれを冷蔵庫に入れたまま、私は火・水と仕事で留守をして、家に戻った木曜日に、いよいよ試食を行いました。
このアンガスくん、若いだけあって、見た目も柔らかそうだったけれど、丸のままオーブンで焼いたのを切り分けよう とナイフを入れると、まるでケーキを切るようにススッと入って行き、びっくり仰天。ビール・アンガスは、まるで仔牛肉のように柔らかかったです。
もらいものだから、たった二人で、1キロ100グラムの骨付きリブを焼いたけれど、パリの和牛専門店では、これをキロ二百何十ユーロで売っていたとか。すると、これ・・・・、すごい贅沢なんだ と改めて認識しました。
サシが入るように育てられただけあって、脂身は多め。Jおじさんは、いつも、うちの脂身だらけのお肉に慣れているはずなのに、おいしいけどそんなにたくさん食べれない と。そう言えば、この脂身、お肉を切ったナイフがすぐに白くなったり、取っておいた肉汁があっと言う間に固まったり、私は、またびっくりしてしまいました。脂身の融点が低いからそうなるんだ とその時思ったのですが、後でよくよく考えてみたら、必ずしもそうではない?
Aさんちも、私たちと同じで、真空パックしたものを、ごく普通のお値段でお客さまに直接売っているそうですから、こんなに柔らかいお肉は、私たちには手ごわい競争相手です。でも、うちのような零細農家も、Aさんちのような優秀牧場も、それぞれに適した動物や飼育方法があり、それぞれ違った役割があって、両方とも存在するところがまた良いんだ と言うのが今日の結論です。
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