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ボラン農場の牛たち

アルモリカの小さな村からアルモリカンArmoricaine牛たちのお話をお届けします。

アルモリカン雌牛300頭

毎年夏の終り頃に(もう一ヵ月以上前に)パリの畜産研究所から、前年末でのアルモリカン雌牛の頭数やオーナーの数を集計した小冊子が送られて来ます。頭数が少なくなり、保護活動が行われているフランス種の牛、全13種は、パリの畜産研究所が管理しています。

それを見ると、2014年末に、アルモリカン種のメスの数が300頭を超えました。保護しないと絶滅してしまう、と言われた時に20頭いなかったアルモリカン雌牛が、30年以上かけてやっとこのレベルに達しました。これだけの頭数になると、今後は急激な増加をたどることでしょう。

全体の頭数が増えたのに対して、オーナーの数はほとんど増えていません。以前は、個人が庭に1〜2頭、というのが主流だったのが、数十頭を飼う《生産者》と呼べる人が出てきたからです。

それは結構なことなのですが、それで、どんなアルモリカンになるのだろうか、と少し気になるところです。

もともと、牛はミルクが目的で飼われていました。家に牛がいるのに牛乳がない、なんてことはあり得ませんでした。ですから、アルモリカンも、あたりまえのように搾乳されていました。どこの農家でも、牛乳またはクリームは、大切な収入源でした。そのために、毎年必ず副産物の子牛が生まれ、オスはお肉になりました。(正確に言うと、子牛で売るか、農作業に使った後肥育してお肉になった。)

牛は、ずっと昔から、農家の大事な家畜として、人といっしょに生活して来たものです。そういう過去のある牛だから、アルモリカンも、人間好きです。

残念なことに、アルモリカンを搾乳し、乳製品に加工し、朝市などで売っていた人達は、次々にお肉生産に移行してしまいました。確かに、今のアルモリカンの乳量は少ないので、商売として成り立たせるのは難しいのでしょう。

ミルクもお肉も、どちらも得意だったアルモリカンが、こうして今は、肉専門牛になってしまいました。肉牛、とは言っても、ほとんどの生産者が売っているのは、8ヵ月までの仔牛肉です。そこまで大きくなると、お肉は真っ赤だし、牛肉の味がします。それが、アルモリカンだと、とびきりおいしいのだそうです。

なぜ、仔牛肉でもない牛肉でもないものを販売するのか、それにはアルモリカン特有の理由があります。もちろん、他の肉専用牛(リムザンなど)の8ヵ月仔牛肉も存在しますが、アルモリカンの場合、これがほとんどのようです。

アルモリカンのお母さんは、肉牛にしては乳量がとても多いので、子牛がおっぱいを飲んでくれないと困ります。だから、仔牛肉ギリギリの8ヵ月まで待つ傾向があります。

うちの例ですが、放っておくと、お母さんは、次の子牛を産む直前まで、一歳になった前年の子牛におっぱいを飲ませます。これを無理やりやめさせると、お母さんは乳房炎を起こします。じゃあ、搾乳してあげようとしても、がまんして出してくれません。だから、もうあきらめて、やりたいようにさせていますが、一頭のお母さんに子が二頭(その内一頭はお母さんと同じ大きさ)食らいついているのを見るのは、稀ではありません。

反対に、オスは、8ヵ月になると一人前の種雄牛の役を果たせます。だから、それまでに出荷してしまうと、去勢しなくてすみます。

もちろん、最長8ヵ月で子牛を出荷すると、回転が良くて、収益も上がります。仔牛肉なので、成牛の牛肉よりも、キロ当たりの値段も高いです。そういうシステムだと、全体の頭数も少なくてすむので、土地がそれほど広くなくてもできるなど、良いことばかりです。

じゃあ、なんでボラン農場もそうしないの、とおっしゃるでしょう。

じゃあ、私は、こう言います。
あんなにかわいい子牛を食べれる?

せっかくうちに生まれて来てくれた子牛に、短いながら、できるだけ幸せな生涯を送って欲しいんです。そのためには、牛は家畜ですから、私たちと関わり合って、この人たちに任せておけば大丈夫、と思ってもらいたいんです。(時には、信頼を裏切ることもあるけれど・・・。)

牛たちのいる毎日は、ゆっくりで、楽しいです。
特に、アルモリカンは、そんな毎日に適した種類の牛です。

Lana Lilie
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