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ボラン農場の牛たち

アルモリカの小さな村からアルモリカンArmoricaine牛たちのお話をお届けします。

アニマルウェルフェアって言うけれど

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アニマルウェルフェア(日本語は?)って言葉をよく聞きます。
一般市民や団体が、畜産業界でごく普通にやっている動物虐待はもう止めよう、と言う提案をしても、業界側が反対して、なかなか法律に反映しません。(グリフォサートの禁止しかり。)

だんぼくんの1カ月前に、リュリュくんが出発した時のことです。
パリにある会社に買い取ってもらったもので、いつもとは違う屠畜場のお世話になりました。

以前、いなりくんを買ってもらった会社であり、屠畜場も場所は違うけれど前と同じ会社で、あの時と同じように大切に扱ってもらえるだろう、と信頼しきっていました。

だいたい、出発の数日前に屠畜場からお迎え時間連絡の電話があった時、『運転手に銀行口座証明書を渡してくださいね。』と言われて、はぁー? 担当の人は、リュリュくんは屠畜場(を経営している会社)に買ってもらうのではないことを知りませんでした。で、いや〜な予感が。

当日、お迎えのトラックを見ただけで、後悔しました。

トラックはオンボロで、汚れたまま。車体を下げる装置は壊れていて(いつから?)、リュリュくんは、私の背とほとんど同じ位の高さまでよじ登らないといけませんでした。中にすでに小さなホルスタイン牝牛がいて、きっと乗せるのに苦労したんだと思います。トラックは、予定の時間を40分ほど遅れて来ましたから。

運転手さんは、牛を前進させるために電流で脅す装置(日本語で何て呼ぶんでしょうか)、バットのような棒、ロープの三種の神器を出してきました。

リュリュくんは、他のメンバーのように、うちのトレーラーに乗るのは慣れています。牛によっては(例えばマルキーズ)いったん足を踏ん張って乗るのを拒否し、これから行くところを充分観察してからでないと乗らないのもいますが、時間さえ与えれば、決心して乗ってくれるものです。

でも、トラックはとてつもなく高く、どんなに慣れた子でも、ずんずん乗り込むわけがありません。

私たちがリュリュくんのおしりを強く叩いたりしないので、イライラし始めた運転手さんは、
『まだ、あと、雄牛二頭乗せなあかんのやから、早よしてよ。』

あの、あんたが遅れて来たんですけど、とは言いませんでしたが。。。

運転手さんに叱られて(叩かれて)、いやいや汚いトラックに乗り込んだリュリュくん。

あの小さなホルスといっしょに、一番前の仕切りに閉じ込められたので、あとから乗ってくる雄牛たちにいじめられる心配はないけれど、でも、でも、これから何時間走るのやら。で、最終目的地に着いても、時間的に生産ラインは止まっているだろうから、明日の朝まで待たされる?

私たちとしたら、それはイヤなので、いつもは、待ち時間のないタイミングで、自分たちで屠畜場まで連れて行くようにしています。

リュリュくんの扱われ方は、私たちにしたら大NGです。さっそく、会社にクレームしました。(あと2頭ではなくて、3頭だった。)

なにも、うちの牛たちだけ特別扱いしてもらいたい、というものではありません。これから死んでいくものに、あんな扱いはない、と思うんです

業界にすれば、牛も豚も家禽も、みんな大量生産の原料。動物も感性のある生き物、という認識を持ってもらうまで、まだまだ時間がかかりそうです。

でも、もっと認識を変えないといけないのは、生産者だと思います。

特に肉牛の場合、どこも完全放牧です。畜主のすることは、柵の管理と飲み水を持っていくことぐらい。牝牛の種付けは雄牛がしてくれるし、お産もたいてい助産なし。(子牛には耳標を付けてやらないと。)牛が人間と関わり合う機会はほとんどありません。たまにあったとしても、怖いことや、痛いことばかり。

いえ、完全放牧がいけない、と言っているわけではなくて、牛が好きでもなく、本当は興味のない人に飼って欲しくないんです。

人間を知らずに大きくなった牛が出発する時、無理やりトラックに乗せられたら、恐ろしくて、恐ろしくて、暴れるでしょう。牛があんまり暴れるので、屠畜場の係の人も、武装して立ち向かうしかありません。

牛は野生の動物のように、自然の中で一生を終えるわけではありません。どうしても人間と関わらないといけないのだから、たとえ最後は裏切ることになっても、人間好きな牛に育てたいんです。それも、アニマルウェルフェアでは?

牛もそれぞれ性格が違って、中にはいくらやさしく接しても、信頼してもらえず、逃げてばかりの子もいます。でも、顔見知りになるだけでも、恐ろしさは軽減されるはずです。

ほんとに人間好きの子は、たとえ脱走しても、ちゃんと戻って来てくれますから。
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