また、子牛の食べ残しを狙うみよが居残ってるのかな、と思って見に行きました。
『えっ、マルキーズ?!』
Jおじさんによると、牛たちを外に出そうと戸を開けたら、そこにマルキーズが立っていて、乾草を食べたそうにしてるから、自分の席に行かせた、と。
その日は、いつものように、マルキーズはみんなと牛舎に来ませんでした。午後、牧草地に様子を見に行くと、土手の近くで座ってました。夕方また見に行くと、同じ場所で、同じ格好のまま。
立てないのかなぁ、と見ていると、脚を踏ん張って、はずみをつけて、立ち上がろうと。でも、立ち上がれず、だんだん土手の方へずり落ちて、電気牧柵が角に絡まりそうに。私は、あわてて電源を切りに納屋に走りました。
電源を切って戻って来た時には、マルキーズは、何もなかったように立って、草を食べてはりました。
立てるのはいいけれど、この間から気になっていた右後脚が痛そうで、ビッコ引いてます。やっぱり爪切り屋さんを呼ばないと、と思いながら、電源を入れに戻りました。
そんなことがあったので、あの場所からビッコ引き引きよく牛舎まで来れたもんだ、と本当にびっくりしました。私は、脚のことばかり心配して、お腹が空いてるなんて察してやれなかったね。
牛舎で、機嫌よく、乾草をもりもり食べるマルキーズ。しばらくすると、戸の前に行って、牧草地に戻りたいような・・・。でも、牛舎の戸の前はぬかるんでいて、そこで転んだりすると、もう立てません。どうしても外に出たいのか、少し様子を見ることに。
夜遅く牛舎を見に行くと、マルキーズは、Jおじさんが用意したふかふかのお布団(わらだけど)の上に、ちょこんと座って、こっちを見ていました。
『ほな、お泊りね。』と周りにもいっぱいわらを敷いて、立ち上がる時に痛くないようにして、『おやすみ〜。』
次の朝、まだお日さまは昇らず暗いので(でも7時過ぎ)、ゆっくり寝かせておくつもりだったけれど、小屋のストーブに火を点けていると、マルキーズが目を覚ましている気配が。
どうしてるかな、と牛舎に行くと・・・、
マルキーズの姿が見えません!
もうその時、何が起こったのかわかりました。
牛舎から納屋に行く出入り口の前は、ちょうど牛一頭が入れる大きさの通路になっています。そこに牛が入ってしまうと、その先は乾草ロールが積んであって進めません。もしも、他の牛に後ろから攻撃されても、逃げ場のない恐ろしい場所です。今は、その通路がわら置き場になっていて、ふつうに考えると牛は入れません。
前の晩、その場所が気になったけれど、まさか・・・。
マルキーズは、わらの山を越えて、そこにあったはしご(木製ですごく重い)を倒し、乾草ロールが頭につっかえて倒れていました。
ケガは無いようだけど、何時間その格好で倒れたままだったのか。きっと、夜中に外に出たくなって、こんなところに入り込んだんだよね。
その狭い通路から出すのにすごく時間がかかり、やっと引っ張り出せた時は、マルキーズは横向きに倒れたままでした。時々もがくけれど、いつもの“お座り”のポジションにさえ戻れません。
しばらく休めばまた立ち上がるかも、とわずかな期待をかけたけれど、だんだん動きが少なくなり、目を開けているのがやっと。とうとう獣医さんを呼ぶことにしました。
午後の早いうちに来てくれた獣医さん(女性)は、やさしい先生でした。3人がかりで座らせようとしてもマルキーズにはその力もなく、良くなる可能性なし。今すぐ楽にさせたいか、もう少し時間が必要か、私たちの気持ちを聞いてくださいました。
私たちは、もう獣医さんを呼んだ時から、心を決めていました。Jおじさんが前から言っていた通りに。
獣医さんが注射の用意をしている間、私はマルキーズの頬と首のあたりを撫でていました。小さくカールした毛は、ふわふわモコモコ。
子牛のお尻を触っては、『わ〜、ふわふわ、気持ちイイ〜!』って喜んでるけど、マルキーズも、いえマルキーズが、その“ふわふわモコモコ”の毛の持ち主だったんだ。
マルキーズは、小さい時から触られるのが大嫌い。頭に手を持って行くと、首を振ってイヤイヤ。一度、背中に手を置いたら、後ろ脚が宙を舞ったことも。それからは、なるべく触らないようにしてきました。
それが、こんなことになって、初めて撫でさせてくれて・・・。
マルキーズがいなくなったボラン農場は、今までとは違います。これからはどんなボラン農場になるのか。今はまだわかりません。
おまけ : 私のお気に入りの一枚。2009年7月。ちっちゃい子牛はエドワード。

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