ボラン農場の面積は 農地だけを数えると 12ヘクタールちょっとです。理論上 12頭の牛が飼える広さですが、実際は 乾草も作らないといけないし、もっと土地が必要になります。それで、羊飼いのジョンさんちを借りるようになるまでは 毎年 夏枯れで草がなくなるころは 牛たちをよその空いている牧草地に入れてもらっていました。
バリウム君が生まれた2004年は ここから南に約2キロ行った K牧場の一区画を拝借しました。ボラン農場からそこまで 舗装されていない でこぼこ道を下りて行くのですが、車はまず来ないとは言っても、その狭い道の両側には よその牛が(種雄牛も)います。ボラン農場の牛大移動は 考えるだけでドキドキの大イベントでした。
まず、行くだけでも大変でした。第一回目のトライでは ボラン農場を出てほんの数百メートルとのところで 先頭に立っていた去勢牛たちがUターンし、全員みっともない格好でうちまで突進してくれました。
第二回目のトライでは まだ小さかったのろまのユゴリンが(文字通り)道草を食い始めました。みんなの最後を歩いて(走って)いた私が のろのろしていると まただれかがUターンしそうだったので ユゴリンは置いてきぼりにするしかありませんでした。
みんなを無事に目的の牧草地に閉じ込めて やれやれと思っていると・・・ 遠くからユゴリンの叫び声が聞こえました。ユゴリンが あの巨大な種牛に悪さされているのを想像してしまって 私は大急ぎで 助けに走りました。その道のりの長かったこと。いくら行ってもユゴリンの姿は見えません。ええーっ、どこ行ったぁ と思いながら さっきユゴリンが道草を食べていたところまで行くと、なんのことはない まだそこで草を食べていました。そして 時々顔を上げては泣いていたのです。おかげで、道の両側には よその牛たちが見物に来ていました。私が呼ぶと ユゴリンはすんなりついて来ました。途中で すれ違った人が『まあ、おとなしい牛ねえ。』と驚くほど わき目もふらずに。
問題は帰りでした。7月も中旬になり ボラン農場も少しは草が伸びたので、つぼみちゃんのお産も近いし、牝牛だけを連れて帰ろう ということになりました。でも、去勢牛の中には その気になれば 電気牧柵もなんのその というのがいます。(なぜかみんなマルキーズの子。)そのために 予め去勢牛たちを遠くに離しておいて 牝牛たちと子牛たちだけを連れて道に出たのですが・・・




去勢牛とつぼみちゃんは Jに任せて、私は牝牛チームの先頭に立って ボラン農場まで連れて行きました。それがすんだら、私は 急いでまたK牧場に戻りました。麦畑があまりにも広いため 全員をそこから出して 牧草地まで戻すのに かなり手こずりました。それでも なんとかみんなを牧草地に閉じ込めて、牧柵の応急処置が終わると もう夜でした。つぼみちゃんのことは また明日考えよう ということに。ところが そうしているうちに(あれだけ走りまくったせいか)つぼみちゃんは K牧場でお産をしてしまったわけです。
つぼみちゃんは バリウム君がある程度大きくなって、しっかり歩けるようになってから ボラン農場に連れて帰りました。牝牛は 一頭でも群でも ちゃんとついて来てくれます。それにひきかえ、去勢牛は いったいどこに脳みそ付けてるの と思うほどぼーっとしています。道を歩かせても 何かおいしそうなものがあると ふーっとそっちに行ってしまいます。なので、夏の終わりに 去勢牛たちをボラン農場に連れて帰った時は 気が狂いそうになるくらい めちゃめゃをやってくれました。それでも 一頭も欠けることなく 全員うちまでたどり着いたのは まさに奇跡です。
こういうことがあってからは、去勢牛を歩かせて移動 というのは絶対にしないことにしました。
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